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Lee-Byung-hun addicted

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第8話

Femme de ma vie ~Homme de ma vie <8> 


「ヒョン、ちょっと休みましょうよぉ~~~」智は朝からずっと休憩することなく滑り続けるビョンホンに向かってそういった。
「智、もう疲れちゃったの?体力ないなぁ~」ビョンホンは笑いながら答えた。
「じゃ、お前休んでろよ。俺はもう一本滑ってくるから。」
そういうとボードをひょいっと抱え、ビョンホンはゴンドラに向かった。
「待ってくださいよぉ~」

ここはニセコグランひらふスキー場。
新千歳空港から車で2時間近く。
昨日ここに着いたビョンホンたちは朝からずっとスノーボードを楽しんでいた。
結局、ビョンホンはファントムのスタッフも誘い総勢25名の大所帯での大スキーツアーになっていた。
天気も良い。平日ということもあってゲレンデはガラガラだ。
雪質は日本最上級と言われるほどのパウダースノー。ビョンホンは久々のスノボードを満喫していた。
「いやぁ~ここ最高だね。揺も連れてきたかったなぁ。また三月になったら来ようかな。」
雪を払ってレストランに入りながらビョンホンは言った。
「気に入ってもらえてよかったです。急だったしヒョンがホテルじゃなくてペンションがいいっていうから結構苦労したんですよ。それに急に25人なんて。」
「だって、ホテルは泊まりなれててつまらないからさ。プライベートで旅行に来た時くらい違う気分味わいたいじゃん。人数は多いほうが楽しいし。」

「それもそうですね。このあたりだったらヒョンのこと知ってる人も少ないかもしれませんね。」
二人はビールで乾杯したあと大盛りのカレーをたらふく食べた。
「あ~食った食った。ヒョン口の周りにカレーついてますよ」と智。
(まったくこの人があの『イ・ビョンホン』なんて驚きだよ)
二人は顔を見合わせて大笑いした。
・・と学生らしき二人がビョンホンたちに向かって近づいてくる。
「あの~失礼ですがイ・ビョンホンさんじゃありませんか?」
予想しなかった場所での問いかけにビョンホンと智は顔を見合わせた。
様子を見るに悪いやからではなさそうだ。
「あっ、そうですけど何か」智が気を利かせて返事をした。
「僕の母がビョンホンさんの大ファンでいっつも作品観てます。僕も『甘い人生』とか『オールイン』とか観てカッコイイなって。すいません。サインと握手お願いできませんか」
大学生らしき青年達はちょっと恥ずかしそうに頭を下げた。
「いいですけど。それより一緒に滑りませんか?」ビョンホンは笑ってそういった。

午後、ビョンホンたちはその学生達と四人でゲレンデを滑りまくった。途中雪投げをしたりダリチン智を埋めたりして遊ぶ。ビョンホンはとてもひとり30代とは思えぬ元気さ。
むしろ彼は一番はしゃいでいたかも知れない。
時が経つのを忘れ遊びつかれるまで遊んだ。
話してみるとお互いの宿屋が近かったので夜も一緒に食事することに。
青年達が大学の映画研究会に属していたこともあって話は自然と映画の話で盛り上がる。
「ビョンホンさん、次回作は決まったんですか?早く発表してくれないとうちの母機嫌が悪くて困るんです。」
そんな青年の訴えにビョンホンは妙に真面目に答えた。
「いやぁ~僕の問題が君に迷惑かけているなんて申し訳ないな。なるべく早く発表できるようにするよ。ところで君たちは僕がどんな作品に出たらいいと思うかい?」
ビョンホンは逆に彼らに質問した。
「僕はサスペンスものかな。犯人役とかいいんじゃないですか。」
「僕はヒューマンドラマかな。人間の尊厳みたいな重い題材を扱ったような作品が見てみたいですね。」
「なるほどねぇ。是非参考にさせてもらうよ。それからお願いがあるんだけどここで僕に会ったことは内緒にしてもらえるかな。多くの人に迷惑がかかるといけないから」
「わかりました。そのかわり・・・」
「あっ、約束のサインと握手ね。」ビョンホンはそういうとゲラゲラ笑った。
「オモニの名前も入れておこうか?」
「えっ、いいですか?」
「じゃあ、『ルビー』ってお願いします。」
「変わった名前だね。お母さん、日本人じゃないの?」そう尋ねるビョンホンに彼は照れながら答えた。
「うちの母ブログにはまっててハンドルネーム持ってるんですよ。『ルビー』はハンドルネームです。毎日ビョンホンさん関係のブログのチェックでそりゃ、忙しそうなんです。あっ、すいません。もう三枚。今度は『mimiraさんへ』と『うさるなさんへ』と『lotusrubyさんへ』で。」
「ひぇ、またまた面白い名前だね。またハンドルネーム?」笑いながらビョンホンは言った。
「そうなんです。母のブログ仲間でいろいろお世話になってるんです。」
彼は頭をかきながら笑った。そして
「あの・・・ついでに手形も・・・・もらえますか?きっと喜ぶと思うんで。」
オモニ想いのビョンホンが彼の申し出を断るはずもなかった。


揺は久々にビョンホンにメールを打とうとPCの前に向かっていた。
ロケも終盤。あと2日の日程を残すのみとなっていた。

「親愛なるビョンホンssi 
 元気にしていますか?貴方のことなのできっと今は私のことなど考えもせずどこかで誰かと楽しく遊んでいるのではないかしら。私もその方がちょっと気楽で嬉しい。ちょっと寂しいけどね。
さて、こちらでの仕事もあと少しになりました。
もうすぐ貴方に会えます。・・・と言いたいところなんですが急にしなければならないことが出来てロケ班と一緒に帰国しないことに決めました。
理由はとてもメールで書けるような単純な内容でないのまた電話で話します。
ただ、もしかしたらというよりは必ず貴方に手伝って欲しいことができそうです。
心の準備とスケジュール調整をしておいてください。
じゃ、また電話します。
ちゃんと朝寝坊してる?最近また夢に出てくるのサボってるでしょ。
きっと朝早くから遊んでるのね。。帰ったら私も仲間に入れてください。
では、またあとで。
                            貴方の揺より

送信。
さあ、あと二日。頑張ろう。揺は自分に気合を入れた。「アジャっ!」


スキーから帰ってきたビョンホンを待っていたのは揺からのメール。
久々の彼女からのメールに彼は喜びを隠せなかった。
「ひょひょ。あれ、揺ちゃんやっと帰ってくるのかな~」
そうつぶやきながらメールを読む。
「何これ。何で仕事終わってすぐに帰ってこないことになっちゃったんだよ。」
不機嫌そうにもう一度メールを読み返す。
「手伝って欲しいこと・・・スケジュール調整・・・仲間に入れて・・貴方の揺より」
そんな文字をみてまんざらでもない気持ちになってくる。
いまさら焦っても始まらない。ここまで待ったのだからもう少しだ。
ビョンホンはようやく見えかけたゴールを前にゴールした後の喜びのことを考えながら目を閉じた。
(あいつ、出てくるかなぁ。明日の仕事は午後からだし。よし、昼まで寝よう)
ビョンホンは嬉しそうにベッドにもぐりこんだ。


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